2021年はまった作家さん、3
今回はルシンダ・ライリー、エリー・グリフィスに続きハマった作家さんについて紹介します。
3人目の方は珍しく男性。スイス人の作家さん、ジョエル・ディケールさん。
1985年生まれということで、まだまだ若い作家さんです。
今までの作家さんと違って、自分よりも若い!
By Krimidoedel – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
スイス人ですが、なのか、だから、なのかはわかりませんが、本は全てフランス語で書かれています。
分野としてはミステリーになりますが、自分自身が好きな作品はミステリー要素が強くありません。
大学時代は法学部に在学、2010年に修士を卒業し、その後、作家としての人生がスタートします。
ジョエル・ディケールの作品
2012年に出版された2冊目の『ハリー・クバート事件』で数々の賞を受賞し、ジョエル・ディケールの名前が世界中に知られることになります。

スイス人でありながら、アメリカを舞台にした作品が多いのも面白いところです。
2020年に出た『622号室の謎 The Enigma of Room』のみがスイスを舞台にしています。
自分自身は、この作品を一番はじめに読みました。
そしてハリー、そして続編の『ゴールドマン家の悲劇』です。
続編であるゴールドマン、が一番好きです。
どの作品も、作家が主人公になっており、作家が本を書けなくなってスランプに陥る。などといったくだりが多いので、ジョエルさん自身も本を仕上げるまでにスランプになることが多いのかな、という個人的な感想を持ちました。

以前のルシンダ・ライリーやエリー・グリフィスに比べ、作品を出すスピードも遅め。2年に1冊程度なので納得がいきます。むしろ、前者のふたりは、1年の間に少なくとも2冊の本を仕上げているので、そのスピードの速さに驚かされます。
この作家さんの2大作品はどちらも日本語に訳されているので、紹介させていただきます。
『ハリー・クバート事件』
今回もAmazonアソシエイトを利用させていただいています。
こちら上下巻の2冊で創元推理文庫より出ています。この本はミステリーです。
こちらの主人公はマークス・ゴールドマン。処女作で大ヒットを繰り上げるのですが、その後、何も書けなくなるというスランプに陥っています。
闇のどん底で過ごすマークス。
彼は大学時代の恩師であり、国民的作家として活躍するハリー・クバートに相談をするのですが。

その後、アメリカ中を揺るがす衝撃のニュースが!
ハリーが33年前に失踪した少女、ノラの殺害容疑で逮捕されてしまうのです。
なぜならば、ハリーの家の庭にノラの骨が埋められていたからです。
恩師の無実を信じて疑わないマークスが調査をし始め、それを自分の小説として書き上げることに。
誰がノラを殺害したのか?なぜ骨がハリーの庭に埋められたのか?
絡み合った糸を解きほぐしていくうちに、マークスはハリーとノラの愛の裏に隠された真実を知るのです。
感想
よくできたストーリー展開で、うまい!と思うところが多くありましたが、この本はそこまで惹かれませんでした。
それでも、大学時代のマークスとハリーの二人の間で交わされる恩師と弟子の会話は読んでいて面白かったです。
どんでん返しに次ぐ、どんでん返し、ということが売りですが、最後の謎が解けるシーンがとても切なく、美しく、なんとも言えず悲しい気分になったので評価は4です。
こちらの本は2018年にテレビ化もされています。
『ゴールドマン家の悲劇』
この本は良かったです。
何度も涙し、今でも読み返してみる本の1つです。
こちらは『ハリー・クバート事件』の続編。
マークスが幼少時代を過ごしたゴールドマンの従兄弟たちとの思い出を綴った本です。
続編ではありますが、関連があるわけではないので、この本から読み始めても違和感はありません。
本の題名からわかるようにゴールドマン家に悲劇が訪れるのですが。
平凡な家庭に育つマークス・ゴールドマン。その従兄弟であるバルティモアに住む裕福な従兄弟たちに憧れる少年時代。弁護士のソウル伯父に、優しくて美しいアニタ伯母。全てが完璧に思えたバルティモアのゴールドマン一家がどのように壊れていってしまったのか。
叔父が、最期の一人の時間を過ごしたフロリダにマークスが訪れるところから物語は始まります。

そこで出会ったのは、10代をバルティモアの従兄弟たちと共にかけがえのない日々を過ごしたアレクサンドラ。そしてマークスのかつての恋人。
まだお互いに惹かれ合う二人。しかし、アレクサンドラには現在をともに過ごす恋人も。いけないことと知りつつ、2人の距離は少しずつ近づいて行きます。
2人はかつて伯父の住んでいた家を訪れ、幸せだった時の思い出を話し始めます。
バルティモアの悲劇とは

マークスの従兄弟、ヒレル。そしてヒレルの兄弟として、ソウル伯父が家族として引き取り、育てたウッディ。2人は強い絆で結ばれ、マークスは嫉妬心すら覚えます。そしてヒレルの学校に転校生としてやってきた難病のスコットもバルティモアの一員に。そしてスコットの姉であるアレクサンドラとの出会い。この時の思い出はあまりにも美しく、かけがえのない日々。
しかし。
彼らの成長とともに、揺るぎなかったバルティモアの絆が少しずつ崩れていきます。しかし、それはこれから先に訪れる本当の悲劇の前兆に過ぎなかったのです。
彼らに訪れた悲劇とは?マークスはなぜ、アレクサンドラと別れたのか?アレクサンドラが本当に守りたかったものとは?過去に封印されていた悲劇のストーリーが少しずつ解き明かされていきます。そして全てを知った2人が選ぶ道とは?
この本は思い入れがあるので、ついつい長くなってしまいました。
心の闇との付き合い方

ほんのわずかの心の歪みだったり、嫉妬だったり、闇だったり、それが大きくなるにつれ、マイナスの気に飲み込まれてしまう恐ろしさ、悲しさを上手く描いている小説だと思います。
今ここにある姿でいいのに、そこから何かを求めてしまう人間のエゴ。小説なので極端かもしれませんが、この本に書かれている危うい気持ちは全ての人に共通してあるものなのだと思います。それをうまく操れるか、それに押しつぶされてしまうかを決めるのは自分でしかないのです。
この小説で悲劇の人生を送った人たちも、はじめはちょっとしたほころび、だったのです。彼らが全て悪かったわけではないのです。善と悪の境は紙一重。人生の選択をするのは自分次第なのだと、この本を読んでいて強く感じました。
そして思うこと
所々のシーンは読んでてしんどいところもありました。イジメのシーンなどです。
それでも、ジョエル・ディッカーさんの描く物語の魅力に引き込まれ、最後まで読み切りました。私にはこれまた、人生を考えるいい機会になりました。
さらに、こちらの本はオーディオブックで読んだのですが、この読み手さんが素晴らしかったです。それもこの本の高評価の1つのポイントです。
なので、もちろんこの本は星5つです。
評価については数も多くない上に、賛否両論です。それでも、私はこの本をお勧めします。
このブログで、ちょっとでも読んでみようと思った方がいたら、手に取ってみて下さい。後悔はしないはず!です。
こちらも上下巻出ているので、上だけお試しに読んでみてもらうのもありです。

それでも、私は最後の数十ページのくだりが好きです。愛とは、許しとは、何かも考えさせられます。
ご縁の話から、書こうと思いつつ紹介できていなかったジョエル・ディケールさんの話まで書き遂げることができました。
以上が2021年にハマった作家さんたちです。残念ながら、今年、2022年には彼らを超える作家さんたちには出会っていません。
また、心に響く作品に出会った時には、こちらのブログでも紹介させていただきます。
さて、次のブログは何にしましょう?
本日も最後まで読んでいただいた方々、ありがとうございました。