土曜日のこと。
元同僚の友達が、電話をかけてきました。
話によると水曜まで会社を休んでいるとのこと。
どこかでクモに刺され、ももの裏側がリンゴ大に腫れ上がったとか。
とても痛くて椅子に座ることもできないとのこと。
とりあえず、会社から休暇を1週間もらったらしいです。
そんなこんなで保険の話になりました。
彼女は医療保険に入っているとのこと。
私は入っていません。
今回はフィンランドの保険、医療事情について少し紹介します。
フィンランドの保険制度

北欧の、フィンランドの福祉制度が良いと話題になったこともあるようですが、実際のところはどうなのでしょう?
フィンランドのマイナンバー
フィンランドに住んでいる人にはソーシャルセキュリティーナンバー、つまりIDが渡されます。
そのIDがないとフィンランド生活ができないといっても過言でもないほど、重要なものです。
日本のマイナンバーのようなものですが、まさにIDなので、どこに行くにも必要になる番号。
医療に関しても、IDがあれば公立の病院を受けることができますが、無ければ私立に行って膨大な額を払わなければいけません。
現在では、どこの病院にかかってもこのIDで情報が管理されていて、今までの履歴から、処方箋情報まで見ることができる、という素晴らしいシステムです。
なので、色々な紙に書いたり、履歴を説明せずにも、お医者さんは情報を得られる、というわけです。
身近なところでは、コロナ証明書も、このIDを登録して自分の健康情報のページに行けば自分で印刷できる、というわけです。
それに、IDは病院に必要なだけではありません。
何に関しても必要な個人番号で、銀行だったり、警察だったり、移民局だったり、とにかくどこでも必要になってくるID。
フィンランドに住み始めた時にはすぐに手続きをしなければなりません。
その前にもちろん、フィンランドに住むためのビザも必要ですが。
IDナンバーをゲットするまで

自身はフィンランド人の旦那がいたので、結婚とともにビザをゲットできました。
それと同時にIDナンバーを申請。
その当時は、旦那の前妻との資料が残っていたりと、ID取得まで時間がかかりました。
そして、びっくりなことにすぐに子供を授かりました。
フィンランドは医療費が高い!

しかし、IDがないということで私立の病院に行かなければいけないということに。
私立がどれだけ高いかというと、診察料で1万ほど。
それプラス検査などが加わると一気に2万、3万は当たり前です。
当時は旦那におんぶにだっこだったので、いくらの出費があったのかは知りません。
そして晴れてもうすぐIDナンバーがゲットできるという妊娠13週目。
まさかの流産!
これまた自費で手術の費用を払わなければいけないという散々な結果に。
手術の1週間後くらいにIDが発行されました。
何事も、人生計画は大事ですね。
当時はフィンランドに来たばかりで、何も知りませんでしたが、今から考えると、まだまだ若かったなぁ、と思います。
もうちょっと、ちゃんと考えて行動していたら、100万近い出費もなかったのでしょう。
当時は日本の医療保険に入っていたので、数十万の支払いがあったのは助かりました。
ということで、IDがフィンランドの生活をするにも大事だということはお分かりになったかと思います。
ちなみにIDをもらってから授かった息子の検診などは、日本に比べれば格段に劣りますが、十分にサポートを受けられました。
さて、IDナンバーを持って病院にかかるとしましょう。
フィンランドの保険制度、ケラ kela

フィンランドは日本と違い、社会保険、国民保険という区切りがありません。
ケラ、kelaと呼ばれる社会保障機関に払う保険料が給料から支払われています。
所得税によっていくら取られているかは違いますが、健康保険料は日本に比べて格安。
このケラなる場所は、多くの社会保障のサポートをしており、扱っているものは健康保険だけではありません。
住居手当、奨学金、その他、病気のサポート金などなど、とにかく、国民が自立した生活を送れるためのありがたい手助けをしてくれるという機関。
そこが福祉国家と言われる理由かと思われます。
福祉国家の現実
これだけ聞いていると、ものすごく素晴らしく聞こえますが。
より良い生活を求めて助けを求める人は後を絶ちません。
そんなこんなで、ケラに並ぶ長蛇の列。
面会するにも、サポートの決定が下るにも、気の長くなるようなプロセスが必要になります。
そして、晴れてフィンランドの社会の恩恵を受けられるというわけ。
そして、決定が下ったからといって永久に続くわけではありません。
他にも同じ恩恵を受けようと申し込む人が後を絶たないので、毎年、審査が行われます。
ちなみに、こちらは息子の疾患申請のことなので、住居申請などについては同じではない可能性もあります。
そして、去年までは出ていた社会保障が出なくなったり、その不満を申し出る人が後を絶たず、結局仕事が回らないというという悪循環。
そして、従業員も不足しているので、対応する人員も足りないというわけです。
何事も、役所仕事は課題が山積みです。
病院にかかるまで
そして、ケラに保険料を払っているからといって、日本のようにすぐに病院にかかれるわけではありません。
なぜなら、日本に比べると、病院も地域の診療所も格段に少ないからです。
ヘルシンキ周辺は病院や診療所に対して、人口が多すぎるという問題もあります。
逆に田舎から離れると、すぐにみてもらえる診療所はあっても、最寄りの病院までは数百キロ、というところも多くあります。
おまけに公共の病院、診療所はオンラインで予約が取れない、電話をしなければいけないという、移民泣かせのシステム。
頑張って電話したからと言って、すぐに診察が受けられる訳ではありません。
息子の結膜炎も様子を見て1週間後に、と言われます。
だったら私立の病院にかかってしまおう!となる訳です。
でも、書いたように結膜炎の診察でも1回軽く1万円の診察料。
そこで必要になるのが、医療保険という訳です。
フィンランドの医療保険

なので、多くの人は自分で保険料を支払って医療保険に入る、という訳です。
保険の種類や入っている労働組合にもよりますが、1年に8万円ほど支払えば、病気・ケガの保証があります。
日本の医療保険制度とほぼ同じですが、こちらではちょっとした病気でも、医者にかかることができないので、すぐに私立の病院で診察してもらえるというのは強みです。
それでもお金がかかるので、失業保険で生活していたり、学生さんはそうそう保険に入れません。
その結果、ちょっとした病気では医者にかかることはありません。
診察にかかれない病人たち。。。

子供の場合。
熱も3日間が目安で、それ以上続く場合は診療所に一度電話します。
おそらく看護士さんに回されます。
市販の薬を買うように言われ、1週間経って熱が下がらなかった場合に病院にかかれる、という始末です。
咳も1ヶ月続けばレントゲンを撮ってもらえます。
ということで、子供も医療保険に入っていないと、すぐに病院にもかかれません。
お金の無い人はどうしたらいいのか?
具合が悪くなった時にはまず、薬局へ。
病院にすぐにかかれないので、薬局には薬が充実しています。
薬剤師さんが、医者の前のアドバイザーという訳です。
なかなか責任重大です。
ところで、ではなぜ私は医療保険に入っていないのでしょう?
会社から支払われる医療代

ということで、仕事に就いている人たちは会社が、医療費を支払ってくれる、という訳です。
まぁ、仕事をしているという時点で、大きな病気も持っていないので、従業員もしょっちゅう病院に行くわけではありません。
それでも、ちょっとした時に医者にかかれるということは、かなり嬉しいです。
それも、この私立の病院?診療所?は色々なところに支店があるので、急性症状であれば、家の近くで診察を受けることも可能なのです。
フィンランド生活を始めてからは、自身も風邪で病院にかかることはなくなりました。
それでも、一度日本から帰ってきていつもと違う発熱があった時には、すぐに医者に行きました。
すぐに検査をしてもらい、ストレプトコッカスに感染したということがわかり、3日間のお休みをもらいました。
こちらで大事なのはまた、このお休み証明書。
この証明書があれば、病欠しても給料が出ます。
子供の病気でも証明書をもらえば給料が支払われるとのこと。
日本にいた時はどうだったのか覚えてはいませんが、ありがたいシステムです。
ということで、仕事をしていると、いろいろなありがたい保証が出るのです。
仕事をしていないと、安心して病気にもかかれない、という訳です。
会社で保証しきれない病気

ここまでの話を聞くといいことだらけの会社の医療システムですが。
完璧ではありません。
まずは婦人科の病気。
こちらは男女平等をうたうフィンランドらしく、保証してくれません。
40歳を過ぎての婦人科検診はありますが、5年ごとなので、推奨される毎年、とはかけ離れています。
なので、昨年、私立の医者に行きましたが、軽く3万以上はかかりました。
こちらは急性の症状ではないので、今度は公共の施設に行ってみようかと思います。
その他で保証してくれないのはケガについて。
確か通勤中や、仕事中のケガは保証してくれますが、家で起きたことは保証してくれないとかなんとかだったような気が。
ここは定かではありません。
でも、かなり重症で救急車を呼ぶくらいであれば、公共の病院扱いになるので負担は大きくありません。
あとはもちろん、大きな病気、癌などの治療は保証してはくれません。
他にも、歯の治療や検査、歯石クリーニングも会社は支払ってはくれません。
医療保険加入の必要性
なので、いつかは自身も医療保険に入った方が安心ではあるということです。
そして、なぜ、友人は仕事をしているのに保険に入っているのか?
答えは、彼女は公務員だから。
ヴァンターという市の職員です。
そちらも医療保障はありますが、平日8〜16時のみ、という、ありがたくない医療保障。
世界どこでも同じでしょうが、市の職員は不足しています。
市の職員の病気のために、少ない予算から人手を割けないという現実です。
つまり、トータルで考えると。
フィンランドの医療福祉はそんなに素晴らしくない!
という現状です。
今回はフィンランドの医療事情について紹介させていただきました。
いかがだったでしょうか?
ネイティブドクターとオンラインで
コロナになってからはオンラインで日本語のドクターと面談できる、というサービスがあり、人気だったようです。
今も広告などでも見ることがあるので、必要な方はこういうサービスを使ってもいいのかもしれません。

身体的の辛さよりも、精神的な辛さにはネイティブが助けになることは間違いありませんね。
他にも。
以前に比べると、外国人のお医者さんも増えてきたので、英語ができる方は生活もしやすくなってきているかと思います。
まぁ、自身はそれなりに大きなこともありましたが、どうにかなるか!精神で乗り越えてきました。
今後、年を老いていくにつれ、日本語しか話せなくなったらどうしようか、と思うこともありますが、その頃にはAIが進んで、きっと通訳機能も付くに違いありません。
自分自身は医者よりも何よりも、日本人の、そして他の国の友達が周りにいてくれることが大切です。
友は偉大です。
今年は厄年のように不幸に襲われ、何度、彼女たちの優しさに助けられたことか。
医療で身体的な傷は治っても、心の傷を癒してくれるのは、自分のことを心配してくれる友人の存在です。
彼女たちに出会えたことを感謝しつつ、今日もブログを終えたいと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
