ルシンダ・ライリーの紹介記事は、あまりに作品が好きすぎて3回目の書き直しです。
洋書を読みたいけれども、英語が難しそう、日本語の本の方がやっぱり面白いんじゃない?と思っている方々へ、
洋書にも素晴らしい作品があると伝えたくて書いています。
その中でもルシンダ・ライリーの描く世界観があまりに美しく鮮明で、私は何度も物語に引き込まれ、涙しました。その後、何冊も洋書は読んでいますが、彼女を越える作家さんにはまだ出会えていません。
2021年に56歳の若さでこの世を去りました。とても残念です。
ルシンダに興味あり、このブログに出会った方へ少しでも彼女の魅力が伝えられたら、と考えています。そして将来的には彼女の作品が和訳され、より多くの人に届くことを願ってやみません。
A message from Lucinda’s family: pic.twitter.com/4rw9LnotuI
— Lucinda Riley Books (@lucindariley) June 11, 2021
なぜ、今ルシンダの作品が発表されたのか?
今年になってに発売されたルシンダ・ライリー の最新作、と言っても彼女は2021年にこの世を去っているので、2006年に書いたものが日の目を見た、というのが正確な表現でしょうか。その名も『The Murders at Fleat House』。ルシンダの最初で最後のミステリー作品です。
ルシンダの死後、長男であるHarry Whittakerがこの世に送り出しました。彼は以前からルシンダと共に執筆活動をしており、子供向けに本も出しています。まさに、ルシンダの作品の1番の理解者でもあると言えるでしょう。彼の今後の執筆活動にも期待です。
‘The Murders at Fleat House’ enters @thesundaytimes Bestseller List at Number 1! Congratulations, Mum! Pretty cool to have a brand new original novel top the charts a year after your death. Very you. Thank you for making it so very easy to work on, and to publish. It's a corker. pic.twitter.com/OEqa7wDABd
— Harry Whittaker (@HarryTwittaker) June 5, 2022
小説家として成功をおさめたルシンダですが、結婚・育児でしばらくの間執筆活動は休止していました。執筆再開後の記念すべき作品のひとつがこちら、『The Murders at Fleat House』です。
当時書かれたものはそのほかにも、『The Butterfly Room』『The Olive Tree』の2冊。この2冊はすでに本人が書き直したのち、出版されています。当時のルシンダは2000年以前に行っていた執筆活動より時間が空いていたため、本を出版するだけの費用がなく、しばらくお蔵入りになっていたそう。
この『The Murders at Fleat House』は結局発売されませんでしが、息子さんが出版にたずさわったことで、今になって日の目を見たというわけです。息子さんはあえてルシンダの原稿に手をつけず、当時のルシンダの声を皆に伝えたかった、と言っています。
ルシンダ・ライリー最新作『The Murders at Fleat House』
The Murders at Fleat House is out in paperback in the UK and South Africa today. pic.twitter.com/LPrjP0qKn8
— Lucinda Riley Books (@lucindariley) January 19, 2023
この話の舞台はイギリスのノーフォークです。当時、ルシンダが家族と共に過ごしていた場所でもあり、代表作『セブンシスターズ』が誕生した場所でもありますね。
そして、小説の舞台になる寄宿学校はまさに、息子さんたちが行っていた場所だそう。実際の学校ではこの物語のような殺人事件・秘密は何もなかったようです。当然といえば当然ですが、ホッとしますね。
物語は寄宿学校、フリート・ハウスで起こった死亡事故から始まります。死亡事故と処理されるはずでしたが・・・実は事件に見せかけた殺人事件かもしれないという疑いが!そんな矢先に次の犠牲者が現れます。小さな死亡事故が思いもよらない連続殺人事件につながっていき・・・様々なフリート・ハウスに関わった人物が集まり、複雑に絡み合った糸が徐々にほどけていきます。ほどけた糸から辿り着く悲しい真実とは。フリート・ハウスに隠された秘密は一体何なのか?
といった内容です。
ほかのルシンダの作品に比べると、暗めの内容となっています。ミステリーなので当然と言えば当然ですが。書き直しを加えていない小説でもこれだけ人を惹きつけるので、彼女が手を加えていたらどのように作品が変わっていたのか、と考えると少し残念です。
世界観はルシンダですが、ミステリーとしてはごくありふれたストーリー展開かな、という印象でした。彼女の好きな過去と現在をつなぐ糸の絡み方が比較的少なかったというか、予想通りの結末だったかな、と。やっぱり彼女の描く世界観はミステリーにはもったいない!背中がゾクゾクするような感動はあまりなかったので星4つです。
以下は以前書いた、ルシンダの紹介ブログです。
ルシンダ・ライリーの一生
今回は作家ルシンダ・ライリーさんについて書かせていただきます。調べてみるとルシンダ・ライリー本人も、小説のような波乱万丈な一生でした。

アイルランド出身の作家さん
ルシンダ・ライリーは北アイルランド、リスバーン出身。小学校入学と同時にロンドンに引っ越します。当時は、読書のほかにバレエに夢中な女の子。ルシンダはバレエの才能を開花し、トップまで登りつめます。

しかし。彼女の体が悲鳴を上げ、バレエを続けることができなくなりました。バレエの代わりに彼女が見つけたのは役者としての道。14歳から始めた演劇が評価され、16歳にはBBCのドラマに出演することとなります。その後も役者としての道を歩み、いくつかの演劇やテレビドラマに出演しました。
しかし、彼女の身に次の悲劇が訪れます。
作家としての道

22歳のルシンダはエプスタイン・バール・ウイルスというヒトヘルペスの一種に感染し、数ヶ月のベッド生活を余儀なくされます。病気のためにオーディションにも行けず、思うように動けなかった彼女が病床で見つけたことは。。。
小説を書くことだったのです。

小説を書くことに喜びを見出し、2ヶ月の間で600ページの作品を完成させます。600ページというと大体3センチほどの厚み、原稿用紙3センチ、書いたことはなくてもかなりの量ということだけはわかります。当時、ルシンダは自分の時間を費やすための趣味として書き上げたので出版する気などさらさらなく。ただ、彼女の作品を読んだ友人が目をつけます。
知り合いのエージェントにルシンダの書いた小説を見せると、すぐに興味を示し、出版を提案されました。しかし、小説は書いただけでは終わりません。編集をするためにタイプライターが必要になりました。しかし、彼女にはタイプライターを買うお金もありません。
彼女が選んだのは。。。
ウェディングドレスを売ってタイプライターを買うこと。


その結果はいかに?
ルシンダ・ライリー、小説家としての成功
現在のルシンダ・ライリーがあることから想像は簡単ですね!記念すべき1冊目は『ラバーズ・アンド・プレーヤーズ lovers and Players』。旧姓のルシンダ・エドモンドとして25歳で作品を発表します。残念ながらこの本は読んだことはありません。
彼女はそこから小説家として成功し、2000年までの9年間に8冊の本を出版します。

皇室スキャンダルの小説
しかしながら、その中の一冊は皇室スキャンダル。出版はされたものの、店頭に並ぶことはことは無かったそう。当時は皇室スキャンダルはアンタッチャブルの領域だったようで、日の目を見ることはありませんでした。
しかし、その後ルシンダが『セブンシスターズ』で注目されてからはこちらの作品も店頭に!名前を変え、『ラブレター』として2017年に出版されました。こちらも残念ながら、日本語は出ていないかと思われます。
−1995年ロンドン、95歳である有名な俳優が死亡します。この俳優の葬儀に参列したジョアンナというジャーナリスト。そこで出会った老婆からある秘密を話したいと言われます。数日後、彼女の元を訪れたジョアンナはその老婆が亡くなったことを知ります。その死に疑問を持ったジョアンナは彼女のことを調べ始めますが、そこには思いもよらない皇室スキャンダルが隠されているのです。
というのがあらすじです。私はちょっと暗めの話だったのと、ルシンダの描く世界と少し違ったので星3つです。エドモンドとして書いていた作品と知り、納得しました。
その後はしばしの休業
2000年以降は小説家としてではなく3児の母としての10年間を過ごします。その間はイギリスとアイルランドを行き来し、現在の夫ステファン・ライリーと出会うことになります。そこからルシンダ・ライリーの名前が誕生したわけです。

ステファンとの間にも1人の子供を授かり、4人の子供と生活。現在、子供や夫は彼女を支え、小説の出版にも多く携わっているよう。夫のステファンは彼女のエージェントとして、上の子供達は小説のPRやメディアに関わっているそうです。
ルシンダ・ライリーとしての作品
10年後の2010年、ルシンダ・ライリーとして『オーキッド・ハウス(もしくはホットハウス・フラワー)』を出版します。最新作の『The Murders at Fleat House』は2006年に書かれていたので、執筆活動のブランクは6年程度だったようです。
『オーキッド・ハウス』
−世界的なピアニスト、ジュリアは傷ついた心をかかえ、幼少期を過ごしたファートン・パークを訪れます。そこは大好きな祖父と過ごした楽しい思い出がある場所。パークを訪れると現在のの持ち主、クラフォードとの出会いが待っています。ジュリアが癒しを求め、たどり着いた地で彼女を待つものは?過去のクラフォード家の秘密とは?ある日記をきっかけに、時は1930年代に戻り。。。
以上があらすじ。こちらはルシンダらしい作風で現在と過去を行き来しながら謎が解き明かされます。この本はこれぞルシンダ!という作品で好きです。数あるルシンダの作品のベスト3に入ります。もちろん星は5つです。
その後は精力的に小説家として活動し、2014年には彼女の代表作、『セブンシスターズ』が出版されます。『セブンシスターズ』の間にも単発小説を書いているので、現在までルシンダ・ライリーとしての作品は合わせて16作品。かなりの量ですね。彼女のアイディアは尽きることがないようで3ヶ月の間に一冊の本を書き上げるよう。それからの編集の方が大変だそう。
最後まで走り続けたルシンダ
そんな彼女も4年間食道ガンと闘った後、2021年6月11日に56歳の若さで亡くなりました。『セブンシスターズ』の7冊目が出版された直後でした。
彼女の頭の中にどれだけの新しい小説のコンセプトがあったのでしょう?それが発表されず一緒に眠ってしまったかと思うと、とても悔やまれます。心よりご冥福を祈ります。

しかしながら、自分の才能を大きく開花させ、太く短く人生を終えた彼女。悔いがないとは言えませんが、最後まで自分の好きなことを追い続け、100パーセントで走りきった人生と言えるのではないでしょうか?
待望のセブンシスターズシリーズ完結編『ストーリー・オブ・パ・ソルト』5月11日発売!
彼女も自分の病気を案じていたのか、『セブンシスターズ』シリーズ、最後の一冊、パ・ソルトの日記については息子さんと構想を練っていたそう。小説の完結編、『ストーリー・オブ・パ・ソルト』は2023年5月11日に出版されます。
UK & Commonwealth cover reveal! Atlas: The Story of Pa Salt will be published around the world on 11/05/2023. Discover how this incredible journey ends, and how it all began… #everythingwillberevealed #whoispasalt pic.twitter.com/OiToTcGf53
— Lucinda Riley Books (@lucindariley) October 19, 2022
Two months today, on 11th May, #EverythingWillBeRevealed across the world! pic.twitter.com/qYKSYYOZ8M
— Lucinda Riley Books (@lucindariley) March 11, 2023
楽しみですね!作品の世界観が息子さんが手がけたことで変わらないといいなぁ、とも思いますが、亡くなった時点では作品はほぼ完成していたとのこと。期待大です。
7冊目は個人的にはちょっぴり息切れ気味の作品だったので、最後のお父さんの話でどのように話が完結するのか、全ての話が繋がるのか、とても楽しみです。
今回は、ルシンダ・ライリーという作家さんについて紹介させていただきました。いかがだったでしょうか?
このブログを通じてルシンダに興味を持ち、本を手にする方がいれば幸いと思います。次のブログではいよいよ気になる作品、『セブンシスターズ』について紹介させていただきます。
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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