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再びアルコールネタです
先日のベルモットのブログでライ・ウイスキーがマンハッタンというカクテルに使われるという話をさせていただきました。
ライ・ウイスキー、と書きながらピーンと来ました。
次のブログではキュロKyröについて書こうと。
と言ってもアルコールネタを二日間続けるのはどうかと思ったので、間に爽やかなフィンランドの夏について書かせていただきました。
キュロKyröという名のライ・ウイスキー

予想通りかとは思いますが、名前の通りです。
ウイスキーの名前、というよりもキュロ蒸留所Kyrö Distillery Companyという会社の名前です。
こちらの蒸留所、ライ麦酒の蒸留所です。

キュロ・モルト・ライ・ウイスキー Kyrö Malt Rye Whiskyというウイスキーだけではなく、キュロ・ジンKyrö Gin (Napueナプエ)というジンが有名。どちらも、ライ麦から作られています。
実際のところ、世界にキュロ Kyröの名前が広まったのはジンの力です。
キュロKyrö蒸留所の歴史
いつの間にか有名になっていたキュロKyröさんですが、実際にオープンしたのは2014年。とても新しい会社です。
むしろ私のフィンランド生活の方が長いですね!

2012年のある日のこと。創設者5人がサウナでアメリカのライ・ウイスキーを飲んでいたそう。
そのうちの1人が、フィンランドになぜライ・ウイスキーの蒸留所がないのだろう?という疑問を持ちます。
フィンランドではライ麦をいっぱい消費するし、作っているのになんでウイスキーはないの?
だったら自分たちで作っちゃおうか!と他の人が提案、そこからキュロKyröの歴史が始まります。
まずは蒸留所探しから。そこで見つかった場所が現在のキュロKyrö蒸留所のあるイソンキュロIsonkyrö川の近く。かつての乳製品を作っていた跡地にいい場所を見つけました。
ウイスキー完成までの道のり
しかしながら、壁が立ちはだかります。
ヨーロッパの規則で、シングルモルト・ウイスキーの熟成には最低3年が必要。作ったはいいけど、今までの支払いどうしたらいいの?という現実的な問題が立ちはだかりました。
そこで思いついたのが!
待ってる3年の間に他のお酒、作っちゃったらいいんじゃない?

ジンとかどう?
となり、2014年に記念すべきキュロKyröのジン、ナプエ Napueが誕生するわけです。
1714年にIsonkyröで起きたナプエNapueの戦い300年後の記念年、ということでNapueという名前がついたそう。
このナプエの戦いなるもの、スウェーデンとロシアがフィンランドの領土を争って戦った大北方戦争の最後の地だったようで、フィンランドはスウェーデンからロシアに引き渡されることになりました。
このジン、何がすごいのか?
このジンが世界中に名前を轟かせたのは、2015年のイギリスで行われたインターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)。ワイン、スピリッツ、ウイスキーの品質を競って争うコンテスト。

その中のジン・トニック部門でなんと!このキュロKyröのジンが優勝を勝ち取ったのです!
このすごいお知らせを受け取ったミーカさん、ジンが出来上がってホッと一息、エストニアに旅行中だったそう。
そこに一本の電話が
⎡あなたたちの名前も、キュロKyröという場所も知らないけど、あなたたちの作ったジントニックが優勝したわよ!⎦
急いでフィンランドに戻り、ひたすら蒸留し、ジンを作った皆さんですが、それでも生産は間に合わず。ニュースが伝わった2日後には作った全てが売り切れたそう。
恥ずかしながら、調べるまで知りませんでした。
どれだけすごいのか?
現在ではこのキュロKyröの2号店がドイツにもあるとか。
それがすごいのか?
昨年、キュロKyröの蒸留所に行きましたが、とてもこじんまりした小さなエリア。高速のサービスエリアの方が断然おおきいです。
田舎の名もない小さな村から作ったジンが世界中に知れ渡る、それだけで十分にロマンではないでしょうか?
キュロKyröジンについて
こちらのジンには16種類のハーブが配合されています。
ジュニパーベリー、レモンピール、セイヨウナツユキソウ、そしてフィンランド人の生活からは切り離せないカルダモンなどのハーブが配合されています。
名前も現在ではナプエからキュロ・ジンKyrö Ginと名を変えました。
オリジナルのキュロ・ジントニックにはローズマリーとクランベリーが添えられます。
他にも3ヶ月樽でねかせたダーク・ジン(Koskueという名前で売られています)。黒胡椒、オレンジピールなどのスパイスやハーブを17種類配合したものです。最近はピンク・ジンなんてものも売られています。こちらはイチゴ、リンゴンベリー、そして以前ブログでも取り上げたルバーブが配合されています。
今年の夏はピンク・ジンを使ったスパークリングも登場するよう。試してみたいです。
ついにウイスキーの完成

樽で温めたウイスキーがこの世の中に登場したのは2020年。Kyrö Malt Rye Whisky(キュロ・モルト・ライ・ウイスキー)という名前で売られ、こちらも高評価を得ました。
サウナの中から生まれたライ・ウイスキーは8年の月日を経て、世の中に出回りました。
5人の初めの夢が叶うわけです。
しかし、記憶に新しい2020年の出来事。
そう!
コロナです。

当時、医療現場で大幅に不足していた消毒液。
2020年3月よりキュロKyröの蒸留所でも、医療現場向けに消毒薬を作ろう!ということになりました。
その後、消毒薬不足が解消されてからは一般用にも売り出され、現在ではキュロKyröの消毒薬を色々なところで目にします。
今後のキュロKyröに期待
キュロKyröさん、ジンやウイスキーだけではありません。

まずはライ、そして蒸留がモットーなので。そこから色々発展し、ジンを使ったカクテル、ウィスキーを使ったマスタードやバーベキューソース、ハチミツ、などなどを作っています。まだまだ新しいアイディアは尽きないようです。
さらにはウイスキーグラス、Tシャツ、靴下など食料品以外も扱っています。成功すればなんでも作れますね。
これからどんなアイデアが飛び出すのか、楽しみでなりません。
キュロKyröオリジナルレシピを味わえる場所
今のところ、残念ながらイソンキュロにある蒸留所のみです。オリジナルのカクテルのほか、バーベキューソースを使ったサンドイッチやマスタードを使ったホットドッグなどが味わえます。

メニューは多くありませんが、至るところにこだわりを感じられる味でした。
注文したものは肉をはさんだサンドイッチに、BBQソースを添えたもの、あとはホットドッグです。
ソースやマスタードも美味しかったですが、肉やパンもこだわっているのか、田舎のフィンランドのカフェではなかなか味わえない高レベルの味がしました。
キュロKyröの蒸留所では観光客向けに蒸留の様子を見れるツアー、その他ホームページからも工場の様子を眺められるようなVRページもありました。フィンランド語しかないのが悔やまれます。
そして一番残念なのは、イソンキュロまで行かないと味わえないこと。
どれくらい遠いかと言うと、ヘルシンキから車で8時間半(笑)。ちょっとやそっとで味わいに行ける距離ではありません。
それでも行く価値はあるので、フィンランド西海岸、バーサなどに旅行に行く機会があればちょっと寄ってみてください。
自宅でキュロKyröのドリンクを
このキュロKyröのバーでしか、オリジナルドリンクやレシピは味わえませんが、ネットからウイスキーやジン、はたまたマスタード、等々グッズを購入することはできます。中にはカクテルレシピやレシピも載っているのでネットで購入して自分で色々試してみることは可能です。残念ながらフィンランドからの購入のみです。
日本から購入可能なものはジンとウイスキー。Amazonさんから購入できるので気になった方はお試しください。ジンの評価はアマゾンでも高いです。こちら、デザインもシンプルですが、とても素敵です。(Amazonアソシエイトを利用中)
こちらがキュロKyröの名を世界的なものにしたジン
こちらはダーク・ジン
そしてこちらが、5人の夢のかなったウイスキー
最後に
今回はサウナから生まれたウイスキー、キュロKyröについて紹介させていただきました。現在となってはジンが一番有名になってしまいましたが。
彼らの遊び心満載な思いつきから、商品開発まで、調べていて楽しかったです。
何もできないと思って何もしなければ何も始まらない、ということを再確認したキュロ Kyröのストーリー。
失敗を恐れず、飛び込む勇気も必要なのかもしれません。
さて、自分にできることは何でしょう?
自分探しの道は続きます。
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。